フラット化する世界(上)
トーマス・フリードマン
日本経済新聞社 刊
発売日 2006-05-25
グローバリゼーション0.0 2006-10-16
むかしむかし、まだクライストもマホメッドも人々に知られていなかった頃、まだナイルの人々が巨大な石を積み上げ始めるよりも前、今で言う「地中海」のほとりより出発して、東に向かって歩き続ける人々がいました。彼らは多くの山を越え抜け、多くの川を渡り、ときには大きな水を泳ぎ渡りながら、数えきれないほどの冬を過ごし、幾世代もの長きに亘る旅を続け、その途中で手にした智慧を語り継ぎ、とうとう「大きな島」に辿り着きました。
それが「北アメリカ大陸」です。
この「大きな島」中に散らばっていった彼らのこども達の中からは更に南を目指すものがあり、そこにもまたひとつの「大きな島」があることを知りました。そしてもちろん、彼らのこども達はこの島の隅々にまで散らばっていきました。
さて、この歩く人々が北の「大きな島」に辿り着くまでにはいろいろな変化が起きました。時に大きくなり過ぎた一族はより小さな一族となって散り散りになり、その中のある一族は違った方向を目指し、また別のある一族はそこに留まることを決意しました。そして別々の道を選んだ者達はそれぞれ落ち着く場所を見つけ、そこでの生活に満足しました。
そういうわけで、今でも彼らのこども達は「大きな大地」のいろいろな場所に住み、また中でも特に好奇心の強い一族のこども達は「大きな水」の奥の奥の方にある島々で暮らしています。
それが「インド人」であり「中国人」であり、また「日本人」でもあるわけです。
やがて、北の「大きな島」に白い人々がやってきました。彼らはとても大きな物音を立てながら、これまで見たこともないようなたくさんのものを作り始めました。彼らの作りだすものを求めて、いろいろなところからいろいろな人々がやってきました。それをもっとも多く持つ者たちが人々の尊敬を受けるようになりました。
白い人々は今、彼らなりのやり方で世界を繋ぎ合わせようとしています。
私が今使っているこの道具も、白い人々が作り出したもののひとつです。これはとても便利だが仕組みがどうなっているのかまったく見当もつかないような道具です。
そして、このようなよくわからないものを通して人々が本当に繋がることができるのか、私には分からないのです。
白い人々が言うやり方で繋がることがより多くの智慧をもたらすかどうかが、私には分からないのです。
それよりも、もとはひとつであった一族の旅に思いを巡らせる方が、これまでに手にしてきた智慧を思い出す方が、私にはしっかりとした繋がりが感じられるのです。
でも今は、一族の意思よりも個々の「自由」の方が大切にされています。
だから私にはどうすることもできないのです。
勝ち組、負け組論−グローバル版 2006-10-02
一言で言えば、この本は、究極的にはアメリカ人自身へ向けての格差社会論、勝ち組負け組論に行き着くと思う。その一例に彼自身、フラットワールドになって自分も仕事を失いたくないと言っている。
勝ち組負け組論は単に日本だけではない、アメリカでもあるし、世界的規模で起こりえる。その状況は、ITや情報通信技術の進展によって現実になりつつあるということだと思う。しかし反面、市場や世界を席巻していた国や組織の前提が崩れてきたという中で、グローバル化する個人が出てきて、組織と対等に競争する状況が出てきた。
チャンスといえばチャンス、危機といえば危機。さてあなたはどうすると読者へ問いかけているような気がする。
今や「世界のフラット化」より「世界の多重生活化」かもしれない 2006-09-19
・「地球は丸い」が普段は「フラットな地球」感覚で生活している。輸送手段である航空機の発達が進み、「一晩寝て起きたら裏側の国で朝を迎える」ことも可能な時代である。
・そしてネットの普及はわざわざ足を運ばなくても「世界中のモノ」が居ながらにして手に入れられる。
・さらに「言語」では、英語が世界的に普及しているが、翻訳ソフトの発達が急速であり、文字英語ならほぼカバーしてきている。
・このように「身近に世界のフラット化」を感じる時代ではあるが、宗教対立はますますエスカレートしていることが一抹の不安材料である。
・ところで、世界がフラット化して、「人類の大移動」が起こるのであろうか?
・この問題は、お国柄、民族性、宗教等々の複雑な問題を含むので「小移動」であろう。
・しかし、ネットの世界では、人類は機会均等の平等の世界に住める。このことは「世界のフラット」と言うより「世界の多重生活化」と言えるのでないだろうか。
若い世代にこそ読んでほしい本 2006-09-09
日経BPの経営者推薦図書だったので読みました。
検索してみると上下でレビューの数が3倍くらい違う。
みんな、上で力尽きたのね…。
いきなりですが、この本を読む前に「ウェブ進化論」を読んだ方がいいです。
ウェブ進化論では、ウェブ上に今起きている変化について述べていますが、
この本は「ウェブ上の変化がリアル世界に与える影響」について、
グローバルな視点でしかもわかりやすい言葉で説明しているからです。
非常に長くて疲れる本ですが、経営事例も豊富で「読ませる」本です。
時間さえあれば、文句なしにおすすめ。☆5つ。
これからの日本、いや世界を担おうかという若い世代、
そしてさらに先の世代を育てようという若い親達にぜひ読んで欲しい。
ちょっとアメリカよりかな? 2006-08-31
例えば、日本で生活をしている分には英語ができなくても問題ない。
映画には字幕がついているし、
出版物はほとんど日本語だし(ベストセラーはちゃんと日本語に翻訳されるし)、
街で外国人はそんなに見かけないし、
そもそも誰も英語をしゃべっていない。
外資系企業や多国籍企業にでも勤めない限り、英語の必要性はほとんど感じないだろう。
また、英語を使わない仕事、英語と無縁の世界で生きる術はたくさんある。
しかし、世界がフラット化したら?
英語ができない(コミュニケーション能力が低い)のに、コストが高い。
そんな人に仕事がくるだろうか?
上の例は極端な例ではあるが、
本書は、世界がこのようにフラット化しはじめていることを、
経済や文化などのいろいろな側面から、実例とともに解説している。
アメリカ人読者が主なターゲットであるせいか、
ちょっと考えがアメリカよりかなという印象を受けるたり、
背景を知らないため所々に理解できないところがあったりするところがあった。
また、説明が少々回りくどいところもいくつか見受けられた。
ただ、内容は非常に示唆に富んでおり、なるほどと感心させられるところも多い(再認識の人もいるだろう)。
現在、そしてこれからの世界を知る上で、読んでおいて損はないだろう。
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